株式会社福井プレス 代表取締役 福井伸氏にインタビューしました。

▼企業情報
社名:株式会社福井プレス
設立:昭和13年
役職:代表取締役
住所:大阪府東大阪市西石切町6-3-42
URL:https://fukuipress.com/

▼事業内容
繊維加工(染色・洗い・クリーニング・プレス)、ワークショップ事業ほか

事業を始めたきっかけ

私は三代目で、祖父の代から続くクリーニング店を引き継ぎました。
もともとはサラリーマンでしたが、クリーニング店や染工場で経験を積んだ後、実家に戻り、家業へ染色事業を持ち込んだことが現在の会社の始まりです。最初から染色に関する豊富な知識があったわけではありません。しかし、現場で仕事を学び、染色工場を見ていく中で「自分たちにもできるのではないか」と考え、挑戦することにしました。

当初は、アパレルや繊維関係の会社から依頼を受ける下請けの仕事が中心でした。ところが2020年頃、社会や産業の流れが大きく変化し、それまでの仕事が一気に止まりました。
会社を続けられるかどうかという状況の中で、「仕事が来るのを待つのではなく、自分たちでできることをつくらなければならない」と腹をくくりました。いわば、背水の陣です。

そこから始めたのが、コーヒーなど、さまざまな事業所から出る廃材を使った染色でした。最初から完成された事業計画があったわけではありません。目の前の人から届く「こんなことはできませんか」という声を受け止め、一つずつ形にしていくうちに、異なる業種とのつながりが生まれ、新しい事業へと広がっていきました。
今振り返れば、あの危機がなければ下請けという立場から抜け出せなかったかもしれません。追い込まれたことが、会社のあり方を変える大きな転機になりました。

倫理法人会に入会した理由

倫理法人会を知ったきっかけは、廃材を使った染色や循環の取り組みを始めた頃、仕事を通して知り合った業者さんから声をかけていただいたことです。

「ホテルセイリュウで経営者の学びの会がある」と何度も熱心に誘っていただき、「それなら一度行ってみよう」と参加しました。そして、最初に参加したモーニングセミナーで入会を決めました。

それまでの私は、経営者団体に所属する必要性をあまり感じていませんでした。アパレルや繊維業界から継続的に仕事をいただいていたため、その業界の中だけで仕事が完結していたからです。

しかし、廃材を使った染色を始め、これまで関わりのなかったさまざまな業種の方とつながる必要が出てきました。異業種の経営者が集まる倫理法人会は、ちょうどその頃の自分に必要な場所だったのだと思います。

入会から約4年になりますが、最初から強い使命感があったというより、まずは続けてみることを大切にしてきました。

人生の転機となるような学び

倫理法人会で特に学んだのは、親子の縦のつながりを大切にすることです。
今年、父を亡くしました。もし倫理法人会で親とのつながりについて学んでいなければ、父との間にあったわだかまりや心残りを、そのまま抱えていたかもしれません。

繰り返し学んできたことが、父の最期を迎えるときに自分の中で生きてきました。そして、「親とは、亡くなってからもつながることができる」という言葉は、私にとって大きな救いになりました。

頭で知っているだけではなく、実際にその出来事に直面したとき、初めて言葉の重みが分かることがあります。倫理法人会での学びが、人生の大切な場面で自分を支えてくれた。そのことは、私にとって非常に大きな倫理体験です。

入会を考えている人へのメッセージ

正直に言うと、私自身、最初は倫理法人会にかなりのアレルギーがありました。
初めてモーニングセミナーに参加したときも、「何か裏があるのではないか」「そのうち何かを売りつけられるのではないか」と、かなり疑っていました。何の下調べもせずに参加したので、独特の雰囲気にカルチャーショックも受けました。

それでも、せっかく入会したのだからと続けてみました。もし第一印象だけで判断し、すぐに辞めていたら、今のつながりや学び、父との間で得られた倫理体験もなかったと思います。

ですから、最初に少し違和感を覚えたとしても、一度だけで判断せず、しばらく続けてみてほしいです。
週に一度、さまざまな経営者の経験や人生の話を聞ける場所は、そう多くありません。経営者や個人事業主同士だからこそ生まれる横のつながりもあります。参加を重ねる中で、最初には見えなかった価値が、少しずつ分かってくると思います。

今後のビジョン

今、特に力を入れているのが、ワークショップブランド「染ノ学舎」の事業化です。
全国のカフェなどに向けて、各店舗で染色ワークショップを開催できるプロ向けの講座を展開しています。講座を受講した方には、インストラクターとして地域で活動していただき、私たちが大阪から出向かなくても、全国各地で同じ体験を届けられる仕組みをつくろうとしています。

さらに、カーディーラー店舗と地域のカフェをつなぎ、全国各地でワークショップを開催する構想も進めています。地域のカフェとディーラーがお互いのお客様を紹介し合うことで、地域の活性化にもつなげていきたいと考えています。
私たちの会社では、「まず事業を考え、そこへ人を当てはめる」のではなく、「この人がいるから、この事業をつくろう」という考え方を大切にしています。

子どもたちに教えたいという社員の思いから「染ノ学舎」が生まれ、アートや表現に関心を持つ社員の思いから「染食還」が生まれました。社員一人ひとりの「やりたいこと」が、会社の新しい事業になっています。

昔ながらの染色技術そのものを変えるのではなく、その技術を今の時代に合う形へ設定し直す。ものをつくるだけでなく、人と出会い、教え、学び、新しい場所で体験してもらうことに向けていく。それは、AIが発達する時代においても、人にしかできない大切な領域だと考えています。
そして、楽しいだけで終わらせず、きちんと利益を生み出すことも大切です。会社が利益を上げ、働く人の生活も豊かになり、なおかつ仕事が楽しい。その状態を実現しながら、「染ノ学舎」を全国へ広げていくことが、これからの大きなビジョンです。

編集後記

「追い込まれたから、そこへ行くしかなかったんです」
福井さんは笑いながら、“やけくそだった”とも話してくださいました。しかし、お話を伺うほど、その言葉の奥にあったのは、会社を残し、社員を守り、これまで培ってきた技術を次の時代へつなぐ覚悟だったのだと感じました。
特に印象に残ったのは、事業から人を探すのではなく、「この人がいるから、この事業をつくる」という考え方です。社員の「やってみたい」を受け止め、染色という技術と結びつけることで、アートや教育、地域交流といった新しい事業が生まれていました。
また、環境に良いことを掲げるだけではなく、「働く人が生き生きしているか」「楽しく続けられるか」「きちんと利益を生み出せるか」を大切にされている姿勢にも、福井さんらしい誠実さを感じました。
逆境をただ乗り越えるのではなく、会社そのものを“生まれカえらせる”。福井プレスの挑戦が全国へ広がり、各地で新しい人と人とのつながりを生み出していく未来にワクワクします!

<取材> 児島 佐予子/大阪鴻池倫理法人会 副事務長
<撮影> 上田 哲也/写真スタジオハート/枚方・交野倫理法人会

2026年11月 No.337 掲載

※記事中の所属や役職およびインタビュー内容は、取材当時のものです。