片桐工業株式会社 代表取締役 片桐映人氏にインタビューしました。

▼企業情報
社名:片桐工業株式会社
設立:1981年10月
役職:代表取締役
住所:京都府八幡市内里柿谷39番地6
URL:https://ks-group.cc/

▼事業内容
片桐工業株式会社は、大阪・京都を拠点に地震に強い建物の骨組みを支える鉄筋工事専門会社です。創業以来、「信頼」と「技術力」で地域に根ざし、若手育成にも力を注いでいます。海外研修制度や教育事業などを通じ、建設業の未来を担う人材育成にも挑戦。確かな施工と人づくりで社会に貢献します。

会社の誕生

片桐工業株式会社は私の父が創業しました。父は高校生の頃、お金を稼ぎたいという強い思いで、ある日、祖母の財布から8,000円を盗みます。このお金で、工具を自ら購入し、日当が高い鉄筋屋のアルバイトに行くことから、すべてが始まりました(8,000円は後に返金された、はずです)。
その後、父はより稼ぎのいい仕事に一度移ったものの、最終的に鉄筋屋に戻り、1981年に会社を設立したのが、当社の創業となります。
私が物心ついた頃、家にはいつも個性豊かな職人さんたちが集まっていました。職人さんたちが、酒を飲み、タバコをふかしながら花札をやっている、幼い私は、それが当たり前の光景でした。
そして、父は私にとって「怖い存在」でした。オーラが凄まじく、当時は一緒に仕事をするなんて考えられませんでした。
私は大学卒業後、家を出て、不動産会社に就職をしました。そこから1年程が経過した、ある日の朝方4時半頃、父から電話がかかってきました。
電話の内容は、工場での転落事故と、それによる業務停止命令でした。父は、会社存続のためには私の助けが必要だと告げました。父が私に頼みごとをするのは人生で一度もなかったため、「これはよっぽどのことだ」と思い、私はすぐに現場に飛び込みました。
2012年、23歳のとき、思いがけない形で私の片桐工業株式会社での人生がスタートしました。
それから7年間は、現場、工場運営、採用など、あらゆる業務を経験する修行の期間でした。
そして、私が30歳になった年、父が経営会議で突如「オレ引退するわ…」と言い出したのです。本来、私より先に専務が社長になる予定でしたが、専務が「映人(私)を行かせましょうよ」と推薦してくれました。日頃、厳しく私に指導されていた専務が「俺よりこいつが行った方が、会社のためだ」と言ってくれたことが、本当に嬉しかった。
2019年、私が30歳で父が60歳の年に社長を引き継ぎました。「絶対悪くしない」「父が求めている以上の数字は絶対超える」という強いプレッシャーを逆手に取り、経営に邁進しています。

入会のきっかけ

私が本格的に社長に就任してから約1年後、私は倫理法人会に入会しました。現在5年目になります。きっかけは、得意な飛び込み営業を繰り返している中で、貫山相談役に出会ったことです。
当時の私は、父の会社で育ったにもかかわらず、違和感を抱えていました。現場は、社員が怒鳴られたりすることが当たり前の環境でした。私は、そうでもしないと人は変わらないと思いながらも、このままでいいのかという問いを自分に投げ続けていました。
貫山相談役には一生懸命プレゼンしましたが、仕事の話には一切乗らず、「火曜日に学んでいるからおいで」と言われました。仕事が取れるならと行った倫理法人会で、私が聞いた最初の学びが衝撃的でした。それは「主体変容」、つまり「他人は変えられない」という言葉です。人を変えようと圧力をかけてきた私の考えと、まさに逆の教えでした。
「やり方」も大事ですが、その正反対にある「あり方」を学ぶことが、自分の器を広げると考えました。私は今も、倫理を学んでいる方と父の両方に同じ質問をすることがあります。全く反対の答えが返ってくることもあり、自分で考え決めていくことで成長を実感しています。

転機となるような学びは?入会してよかった?

やはり「あり方」と「主体変容」に出会えたことです。シンプルな境地に至り、悩むことも少なくなりました。
「あり方」を学ぶことで、今まで表面でしか見えていなかった父の行動の裏にあるものや、教えの根幹にあるものまで気づくようになりました。以前は父の厳しさや言葉に反発する気持ちもありましたが、今となっては全てに感謝できています。
そして、倫理の学びがもたらした最大の成果は、「どこでもやれる」という自信です。この自信があるからこそ、困難な状況下でも、目先の利益や伝統的な「やり方」に縛られることなく、大胆な決断ができるようになりました。

倫理法人会で学ぼうとしている経営者のみなさんへのアドバイス

私自身、まだまだ学びの途中ですが、倫理法人会で学ぼうとされている経営者の皆様に、一つお伝えしたいことがあります。それは、「モーニングセミナーに行った後の1日が、普段とどう違うかを確認してほしい」ということです。
モーニングセミナーに行っても「朝早かったな」「良かったな」で終わってしまいがちです。しかし、それではもったいない。そうではなく、その日の自分と、他の日の自分を比べ、その違いを意識的に探求するのです。
そうすることで、モーニングセミナーがある日のほうが立ち直りが早い自分、エネルギーが高くなっている自分に気づくことができます。この効果は、特に枚方・交野倫理法人会では来た人なら誰もが感じられるほど、エネルギーが高い場所になっていると確信しています。

今後のビジョン

倫理で学んだ「当たり前のことに感謝する力」を蓄え、「いい会社をみんなで作りましょう」という超シンプルなスタンスで経営をしています。
私たちの経営目標の数値は、「社員の定着率」と「お客様の定着率」です。社員が定着しないようなら、目先の儲けがあっても「それはダメです」と、全員が言ってくれるような組織になりました。短期的な数字に弱い会社かもしれませんが、長期的な視点での経営を徹底しています。
最近は、業界内の社長としては異例の若さである私が、古い業界に新しいアイデアを出すことで注目を集めています。私たちは古い体質を打破し、デジタル化なども進めることで、以前は請け負えなかった大型プロジェクトを請け負えるまでに成長してきています。
10年後には、社員とその家族全員を連れてハワイに行くことを公に宣言しています。この目標を達成するため、全社一丸となって日々邁進しています。

編集後記

厳しい現場を経て「主体変容」と“あり方”を軸に挑む覚悟に心を打たれました。定着率にこだわる指標と“10年後ハワイ”の宣言が、会社の温度感と未来志向を鮮やかに示していました。

<取材> 長田充博/枚方・交野倫理法人会 実行委員
<撮影> 澤利一/幸合同会社 代表社員/千里中央倫理法人会 幹事

2025年12月 No.325 掲載

※記事中の所属や役職およびインタビュー内容は、取材当時のものです。