公益財団法人泉北のまちと暮らしを考える財団 代表理事 宝楽陸寛氏にインタビューしました。

▼企業情報
社名:公益財団法人 泉北のまちと暮らしを考える財団
設立:2020年2月3日
役職:代表理事
住所:大阪府堺市南区高倉台1丁2番1号シェアタウン泉ヶ丘ネクストD棟2
URL:https://semboku-fund.org/
▼事業内容
市民の力で地域の課題解決を実現していくために大阪南部泉北周辺地域での地域の新しい資金循環を行う機関として、泉北ニュータウンまちびらき50周年を機にさまざまな取り組みを経て、主に30、40代が中心となり設立したニュータウン型コミュニティ財団。
会社の誕生
公益財団法人「泉北のまちと暮らしを考える財団」は、「泉北ニュータウンのまちづくりから大阪全体をより良くしよう」という想いから誕生した財団です。設立のきっかけは、泉北ニュータウンのまちづくりが50周年を迎えたことでした。
ニュータウンと呼ばれる地域は、メディアでは「オールドニュータウン」と揶揄され、少子高齢化ばかりがクローズアップされがちです。しかし実際には、子育て世代も多く暮らしており、不登校や子育てをはじめとする幅広い課題が存在しています。そうした多様な問題に対し、行政だけに頼るのではなく、市民・企業・団体が連携して取り組む必要があると感じました。
私自身の原動力となっているのは、小学生の頃、同年代の子供たちとともに「きんちゃんの仮装大賞」に出場し、東京遠征の際に地域の方々から支援を受けた経験です。また、高校生・大学生時代にボランティア団体で企画・運営に関わった経験も大きく影響しています。
その経験を通じて、営利団体には商工会議所などの相談窓口がある一方で、非営利団体にはそうした支援先がないことを痛感しました。資金調達や企画実行を進める中で、「こうした団体のための仕組みが必要だ」と思うようになり、それなら自分で作ろうと考えたことが、この財団を立ち上げる大きなきっかけとなりました。
入会のきっかけ
市民が財団を作るという前例はほとんどなく、財団設立の準備に奔走する中で、私は心身ともに疲れきっていました。当時はストレスから突発性難聴を患い、夫婦関係にも悩みを抱えており、「何かを変えなければ」という想いを強く持っていました。
そんなとき、財団の設立について話し合っていた飲食店で、偶然出会ったのが堺市中区倫理法人会の皆さんでした。当時の会長から「明日の朝、勉強会に来てみない?」と声をかけられたのです。
経営者と出会いたいという思い、そして自分がつながる世界を変えたいという気持ちから、迷わず「行きます」と返事をしました。それが、私と倫理法人会との出会いでした。

転機となるような学びは?入会してよかった?

私の活動に対して、「そんなことして意味あるの?」と言われることもあり、気持ちが揺らぐこともありました。そんなとき出会ったのが、倫理法人会の「物は活かすところに集まる」という言葉です。この言葉に深く励まされたことを今でもよく覚えています。
私は少しひねくれたところがあって、人から「やった方がいいよ」と言われると逆にやりたくなくなるタイプでした。でも、講話の中で語られた体験談から学び、「その日のうちにできそうなことをやってみよう」と思い、家族への挨拶やトイレ掃除などから少しずつ実践を始めました。
施設の看板を拭きながら「今日もよろしく」と声をかけたり、植物に水をあげながら「ありがとう」と語りかけたり。まだ実践に恥ずかしさもあったりしますが、そうした行動を重ねていくうちに、不思議と周囲との関係も変わり始め、寄付もどんどん集まるようになってきました。
全国規模のプロジェクトでは、3億円もの寄付が集まることもありました。自分が変われば、まわりも変わっていく。そう実感できたのは、倫理法人会で学び、実際に行動してみたからこそだと思います。
倫理法人会で学ぼうとしている経営者のみなさんへのアドバイス
入会して間もない頃は、自分の居場所がよくわからず、なんとなく疎外感を感じてしまうこともあるかもしれません。そんなときは、できるだけ早いうちに「お役(役割)」を見つけることをおすすめします。
私は音楽担当など、自ら手を挙げて役割を引き受けることで、倫理法人会での関わりが一気に深まりました。関わりが増えるほどに、会の中でのつながりや学びも自然と広がっていきます。
また、講話者の実践で心に響いたことは、ぜひその日のうちにやってみてください。私は講話者の真似をするのが好きで、トイレ掃除やスリッパを揃えるといった小さな実践から取り入れてきました。
「できることから」ぜひともやってみてください。

今後のビジョン
10期目に向けて1万人から5億円を集めることが目標です。
その実現に向けて構想は二つを進めます。
一つ目は、「泉北ユースワークセンター」構想です。企業の協賛によって地域の課題に関心を持つ大学生たちの資金を支援し、前向きで行動力のある学生たちと企業が出会いの場を提供することで、人が循環する地域と社会を作りたいと思っています。
二つ目は、「公益信託」を活用した新しい寄付のモデルです。土地や不動産、山などの“眠っている資産”を貸与という形で寄付し、NPOの活動に活かせる仕組みを整えています。これまでは、信託銀行を通じた現金の運用が一般的でしたが、今後はもっと柔軟で、現場に届く支援のかたちを広げていきます。
ということで、これから私は“公益信託おじさん”になります(笑)
そしてもうひとつ、根底にあるのは「寄付をもっと身近なものにしたい」という想いです。
寄付は特別な人がするものではなく、誰もが気軽にできること。
自分が困ったときに返ってくる、やさしさの循環がある社会。
「普通の人が、普通に寄付できる社会」を目指して、これからも活動を続けていきます。
【取材 朴玄旭/堺市中区倫理法人会/幹事】
【撮影 Syoji photo 代表 山本祥司/広報副委員長】
お話を伺っているうちに、どの地域にも共通して存在する課題に、私たち自身がどこかで「見て見ぬふり」をしていたことに気づかされました。
取材の前日に訪れた「駅前つながるDays」というイベントでは、出展者一人ひとりに丁寧に声をかけ、終了後には会場の椅子やブースを地道に片づける代表の姿がありました。常に笑顔で取り組むその様子こそ、「市民がつくる財団」の形にふさわしい姿だと感じました。
「普通の人が、普通に寄付できる社会」――そのビジョンが明確に描かれていること、そして何より、「泉北」という地域へのあふれる愛情が、言葉の端々からしっかりと伝わってきました。
【宝楽陸寛氏の所属単会/堺市中区倫理法人会】
2025年6月掲載
※記事中の所属や役職およびインタビュー内容は、取材当時のものです。