株式会社マナファルマ 代表取締役社長 喜多綾子氏にインタビューしました。

▼企業情報
○社名:株式会社マナファルマ
平成30年9月13日 大阪市中央区南本町2丁目3番12号
○喜多興産株式会社
昭和52年4月 兵庫県三田市
○株式会社ここあ
令和6年7月 大阪府門真市
役職:代表取締役社長
URL:https://manapharma.jp/
▼事業内容
○株式会社マナファルマ
化粧品・医薬部外品・健康食品の企画、研究開発、販売
○喜多興産株式会社
不動産賃貸業
○株式会社ここあ
障がい者支援事業(グループホーム経営、運営)
会社の誕生
前職では大学の薬学部で教員をしていました。薬学教育も生命科学の研究も、それはそれで本当に面白くて、やりがいもあったんです。でもね、「このまま誰かに決められたレールの上を歩むのは、ちょっと違うんじゃないかな」って、心のどこかでずっと思っていたんです。
だって、雇用されていると、どうしても定年っていう壁があって、年齢で働く機会がプツンと切られちゃうじゃないですか。それに、大学の組織って、意外と不安定な面もあって。「自分の人生は、やっぱり自分で舵を取りたい!」そう強く思うようになって、思い切って8年前に大学を辞めました。
大学では、主に医薬品開発の研究をしていたんですけどね。「一生かけても世に出せる薬を作ることができる可能性はゼロに近い」って痛感したんです。もちろん、それもすごく意義のあることなのですが、私にはもっと、自分の経験と薬剤師の資格を活かして、「何か形のあるものを作りたい」っていう気持ちが強かった。それで、女性として「自分が心から欲しい!」と思える化粧品の開発に、すごく惹かれたんです。
「私、化粧品を作りたいんです!」って周りの人に話すと、ほとんどの人が反対しましたよ。「え、なんでまた化粧品?」みたいな反応で。「そんなの、うまくいくわけないよ」って。でもね、よくよく話を聞いてみると、反対する人って、自分で会社を作った経験がない人ばかりだったんです。「あ、そうか」って気づいたら、なんだかフツフツと競争心と闘争心が湧いてきて、6年前にコネなし人脈なし何もない状態から起業を決意し会社を作ってしまいました。
それから、「化粧品を作りたい!」って、本当にいろんな人に言い続けました。紹介に紹介を重ねて、化粧品を製造してくれる会社との出会いをひたすら求めたんです。そりゃあ、もう、たくさんの会社に断られましたよ。実績もない会社なのに私の想いだけが強すぎて。でも、諦めずに探し続けた結果、最終的に「一緒にやりましょう!」って言ってくれる企業さんと巡り合うことができたんです。
ただね、商品開発はなんとかできたものの、今度は営業が全くの素人だったんです。「これ、どうやって売ったらいいんだろう…?」って頭を抱えました。そんな時も、たくさんの人に助けてもらいました。いろんな人に会って、話を聞いてもらううちに、「応援するよ!」って言ってくれる人が少しずつ現れてきて。そうやって、お互いに支え合うような、温かい繋がりを築いていくことができたんです。
その後、ご縁があって、人が集まるコミュニティを作る会社も立ち上げることになったんです。そこに、同じような思いを持った人たちがどんどん集まってきて、さらにコミュニティ内で事業が広がり立ち上がっていって。気がつけば、福祉事業にまで展開することになったんですから、人生って本当に面白いですよね。
入会のきっかけ
私が堺市御陵倫理法人会とご縁をいただくことになったきっかけは、現・堺市御陵倫理法人会の山村会長からのモーニングセミナーのお誘いでした。
そのとき講話をされていたのが、川村義肢株式会社の川村慶社長(前・大阪府倫理法人会会長)でした。義肢や装具の世界に触れるのは初めてでしたが、社長がご自身の失敗談を包み隠さず語る姿に衝撃を受けました。その潔さと、そこからどう立ち上がってこられたのかというお話に心を打たれました。
実は、私の夫も整形外科で川村義肢の装具を使用したことがありました。そのとき対応してくださった社員の方が、親身になって寄り添ってくださったことを、今でも鮮明に覚えています。その体験とも重なって、川村社長のお話がより身近に、そして深く心に響いたのです。
とはいえ、その場ですぐに入会を決めたわけではなく、気持ちは動いていたものの、実際に入会するまでには半年ほどかかりました(笑)。最終的な入会の決め手は、会場の雰囲気がとても温かく、何よりも印象的だったのは、山村会長をはじめ、会の皆さんがとても丁寧に、心を込めて接してくださっていたことです。なかなか入会を決めない私にも根気よく付き合ってくださり、お一人お一人に向き合うその姿勢に惹かれ会員として仲間になりたいと自然と思えたのです。
今では、「あのとき参加して本当に良かった」と、心から思っています。倫理法人会との出会いと学びは、私の人生を静かに、でも確かに後押ししてくれています

転機となるような学びは?入会してよかった?

本当に不思議なご縁が重なってきたように思います。私はモーニングセミナーに参加しているのですが、自分の単会だけでなく他の単会にもよく足を運びます。すると、その時々で自分にとって必要な言葉がふっと降りてくるんです。講話者の言葉が心に響いて、その言葉と内省的に会話しているうちに、自然と良いご縁が引き寄せられてくる。事業の広がりにまでつながるような出来事が、まるで導かれるように起こることもあります。
他単会に行くと、意外な知り合いに再会することも多くて、「あ、あなたも倫理に入ってたの?」という感じで、共通言語が生まれ、すぐに仲良くなれる。そんな出会いの積み重ねが、どんどん良い循環を生んでいます。
また、倫理の学びを通じて、両親との関係がとても良くなったのも大きな変化です。特に父とは、以前はあまり関わりがなかったのですが、昨年父が倒れたことをきっかけに、父が長年コツコツ築いてきた不動産賃貸業の会社を「任せるよ」と言ってくれたんです。その会社は私と同じ年に生まれた会社で、まったくノータッチだった私にバトンを渡してくれたのは、父にとっても大きな決断だったと思います。倫理で自分自身の在り方を見つめ直し、感謝や敬意を持って接するようになったことが、信頼につながったのかもしれません。
さらに、入会後すぐに声をかけてもらって女性委員会にも参加することになったのですが、そこでも20年前に習い事でご一緒していた方と偶然再会しました。その方がご縁をつなげてくれ、前回の女性委員長や多くの女性経営者の方々とも親しくなれました。みなさん芯があって凛としていて、とても刺激を受けました。倫理法人会という共通の土台があるからこそ、深い関係が築けるのだと実感しています。
私は大阪市内に住んでいることもあって、他の単会のモーニングセミナーにも行きやすく、知人に誘われれば応援にも行きます。そういった小さな行動がご縁を深め、「来てくれてありがとう」と感謝され、また新たなつながりが生まれていくんです。
倫理法人会で学ぼうとしている経営者のみなさんへのアドバイス
私が大切にしているのは、「運」と「縁」です。
では、その運や縁をどうすれば引き寄せられるのかといえば、それはやはり「心の在り方」を整えていくことだと感じています。日々、自分の内側を磨き続けること。そうすることで、自然と必要な出会いやチャンスが向こうからやってくるように思うのです。
「どうやったらそんな良いご縁がつながるのですか?」と聞かれることもありますが、私は「たまたま運がよかったんです」と答えるようにしています。でも実際には、日々の在り方や積み重ねがあってこその“運”であり“縁”なんだと思います。
仕事や人との関係性の中で、自分では意識していなくても、ちゃんと見てくださっている方がいる。人柄や取り組みの姿勢が、縁を呼び寄せてくれるのだと思います。ですから、単なる偶然ではなく、自分の行動や想いが巡り巡って、ご縁として返ってくる。そう考えています。
倫理法人会は、そんな“心の在り方”を学び、整えていく場としてとても貴重な場所です。自分自身を見つめ、成長しようとする仲間と出会えることもまた、大きなご縁のひとつだと感じています。
これからも、自分の心を磨き続けながら、出会いやご縁を大切に育てていきたいと思います。

今後のビジョン
私は数値的な目標を立てるのがあまり得意じゃないんです。今までも、何か大きな戦略を立ててやってきたというよりは、目の前のことをひとつひとつコツコツ積み重ねてきただけなんです。
今、私がやっていることは一見バラバラに見えるかもしれません。化粧品の製造販売、障がい者向けのグループホーム、不動産賃貸業…と。でも、私の中ではちゃんと全部がつながっていて、一貫した想いがあるんです。
たとえば、化粧品は「物を売る」ことが目的ではなくて、「人が本来の輝きを取り戻すためのツール」なんですね。外見の美しさだけじゃなくて、心の在り方、生き方そのものの美しさを引き出すような商品にしたいと思って、植物成分だけで作った美容液を開発しました。
この美容液は、4年前に完成してから、こだわりのあるセレクトショップやエステサロンに置いてもらっていて、私が直接作っているということもあって「珍しいですね」とよく言っていただけます。この紫の色も天然のもので、紫根(シコン)と当帰(トウキ)という昔から使われてきた漢方のエッセンスを使ってるんです。だから、化粧品ではあるけれど、それ以上に人と人とをつなぐ“縁のツール”だと感じています。
一方、門真市で運営しているグループホームで現場を支えてくれているスタッフは信頼できるコミュニティの仲間ですので、人間関係のトラブルが一切ありません。最初は私も現場に入っていたのですが、今では私がコミュニティ活動、グループホームの経営・運営に集中できる環境を仲間が作ってくれています。利用者さんの自立支援ためのより良いサポートはもちろん、そこに関わることで自分の人生にどう活かしていくのかということをコミュニティの仲間と共に日々学んでいます。
そして、不動産賃貸業は父が半世紀近くをかけて積み上げ築き上げた会社の事業です。父は、父とその会社の信用を使って私が挑戦することのできる土台を作ってくれました。父が守ってきたことを守り抜き、世の中に還元しながら次世代に残していく方法を考え中です。
これからのビジョンとしては、こうしたいろんな活動をもっと統合していきたいと思っています。それぞれの事業が、「人が自分らしく輝いて生きる」ことを支えるための手段として、しっかりつながるように。
障がいのある方もそうですし、誰もが持っている“使命”に気づいて、自分らしく生きられる世の中をつくっていく。そんな社会に貢献できるような会社にしていきたいですね
【取材 深田祥一/堺市御陵倫理法人会/幹事】
【撮影 Syoji photo 代表 山本祥司/広報副委員長】
喜多綾子さんのお話を伺って感じたのは、「自然体でありながらも、内側にしっかりとした芯を持って生きておられる方」だということです。
どんな仕事も、肩書きも、すべては「誰かを輝かせたい」という想いにつながっている。
その想いが人を惹きつけ、行動が縁を引き寄せているのだと、深く納得させられました。
これからも、ご自身の心を磨きながら、周囲の人たちの可能性を照らしていく、そんな在り方に共感と敬意を込めて──。
【喜多綾子氏の所属単会/堺市御陵倫理法人会】
2025年7月掲載
※記事中の所属や役職およびインタビュー内容は、取材当時のものです。